Meet Locals 〜地域と世界をつなぐ〜

パブリック(公務員)、ソーシャル(NPO)、ビジネス(特に地域)の3つのセクターのこと・キャリアをそれぞれ経験した立場から発信します。

日本の民主主義はこれからもGo toキャンペーンを生み出す

SPONSORED LINK

f:id:meetlocals:20200719175549p:plain

新型コロナの影響で苦しむ観光業界を支援しようと政府が打ち出したGo toキャンペーンが、2転、3転しています。

 

今月7月22日から開始をすると発表をしたところ、様々な批判を受けて、

・東京を除外する

・若者と高齢者の団体旅行を除外する

などとなり、さらには延期話?も出てきています。

 

私自身はgo toキャンペーンについては、自分にとっては事業としても個人としても特に恩恵を受ける仕組みではないと考えているので、やるかやらないかはどちらでもかまわないと思っています。

 

ただ、やるならせっかくの税金を使う以上、しっかりと効果が出せるかたちでやって欲しいという気持ちはあります。

 

一方で、自分が国家公務員として働いていた時のことを振り返って考えると、今回の決定は「日本の民主主義である」と感じ、そして今の民主主義的な仕組みである以上は、これから先も政府は第2、第3のGo toキャンペーンを生み出し続けるしかできないのだろうと感じています。

おそらく「政府の誰も望んでもいない」にも関わらずです。

少し自分なりに考えを整理してみたいと思います。

 

 

1.「賛成」「反対」の人は自分が当然正しいと考えている

Go toキャンペーンを7月22日から実施した方が良いかめぐる意見は大きくは、

・「賛成」と「反対」

に分けられると思っていますが、そこには様々なパターンがあるように思っています。

 

様々なパターンがあるのですが、「自分の意見が当たり前。なんでわからないのか」という感じを受けるものが多いです。

 

どういうことかというと、例えば、延期を意見されている。三木谷さん。

延期=go toキャンペーンの7/22からの実施に反対

と考えると、このツイートの「流石に」の出だしに、すごく「当たり前だろ感」を感じます。

陽性患者が増えている中でこんなことをやってどうするのだ?と。

 

f:id:meetlocals:20200719140306p:plain

 

ただ、この裏にあるのは

・go toキャンペーン自体に反対

・陽性患者が各地に行って感染者を増やしたらどうするのか?

という、話ではなくて、

・今やるよりも、延期して実施したが経済のために良い

という話な気は勝手にしていますが。。。

 

また、反対の方でも当初から反対だったわけではなく、ここまでGo toキャンペーンが悪者になったので、地域との関係性が大切な事業者が、賛成とは言いづらくなり反対というような面もあるかと思います。

 

これは逆に、Go toキャンペーンをやった方が良いと考えている方のTweetなどを見ていてもそう感じることが多いです。

 

2.賛成派の論理は?

東京で陽性患者が増えているのにも関わらず、Go toキャンペーンを実施した方が良いと考える側の論理としては、

・東京で新型コロナ陽性者は、検査数が増えている中で増えるのは当たり前

・新型コロナによる重傷者や死者数、病床の逼迫具合などが重要

・日本(アジア)ではそもそも致死率は低く恐れ過ぎている

・むしろ景気悪化による自殺者数の増加により死者を増やす可能性もある

あたりがあるように思っています。

 

東京都は、陽性者数以外の数値も出してくれているので、この理論も理解はできます(陽性率も重傷者数も微増してはいます)。

都内の最新感染動向 | 東京都 新型コロナウイルス感染症対策サイト

 

コロナと景気悪化による自殺者数の関係

新型コロナ、日本で重症化率・死亡率が低いワケ | コロナ戦争を読み解く | 東洋経済オンライン | 経済ニュースの新基準

 

また、ただ賛成というだけでなく、

・7/22から実施する必要性

については、観光業への影響は考えられている以上に大きく、本当に廃業かどうかの瀬戸際にいるほどの厳しさがある、というのもあります。

 

別に賛成者ではないと思いますが、ちきりんさんの記事はわかりやすいです。

Go to キャンペーン大混乱について - Chikirinの日記

 

上記で取り上げられている資金繰り的にギリギリのタイミングであることはまさにその通りです。

また、観光業は閑散期と繁忙期の差が極めて大きく、夏休みである7,8月に圧倒的に需要があり、そこを逃してしまうとこの施策をする意味がないという意見もあるかと思います。

 

なお、ここに対しても、理想論としては、ホテルも観光地もキャパシティーが限られている以上、夏休みなどの特定の季節に人が集中するのはコロナの点でも、コロナがなくても観光業にとっては望ましくないので、これを平準化した方が良いという話もあったりもします。

 

これはその通りなのですが、一方で、

すぐに実現できる可能性が限りなくゼロの理論。コロナを機会にして大きく変えていく意味で意見表明としては意味があるが、今年どうするの?という話ではない

通年営業する大企業であればその通りだが、繁忙期のみ営業をする小さな宿も多いので、その点は留意が必要

だとは思っています。

 

また、いくらこのような話をしたとしても、

観光業界の経営者以外にとっては、死ぬリスクがゼロではないというので十分に反対する理由になる

だろうと思う。

 

3.どれも正しい意見を合わせて実行するのが日本の民主主義

お互い当然自分が正しいと思っている様々な意見。

そして正解がない中で、実際どれも正しいと思います。

 

そして日本はすごく民主主義なので、その意見のどれかをとるのではななく、様々な意見を合わせようと動きます。

そして、理想だけをおいかけて何もしないということもしません。

なんとか実行しようと動きます。

 

その結果できあがるのが、誰にとってもよくないような何かです。

東京は除外して、7/22から行うGo toキャンペーン。

 

これは、

答えがない問題に対して、

誰もが正しい答えを出して、

それらのそれぞれの意見に耳を傾けて意思決定する

というすごく民主的っぽいプロセスをとると必ず、これからも起こり続けることだと思っています。

 

では、もっと極端なことをやれ!という意見もでるかもしれませんが、これはなかなか実行するのが難しいです。

過去では、理想をかかげて、その結果なにも実行できなかったのが民主党だと思っています。

僕は実はすごく良いことをたくさん掲げていると思っていたので、本当にこれは残念でした。

理想を掲げるのはそんなに難しくもなく、それを実行することの難しさを感じました。 

 

4.政府だってつくりたくないのに、誰にとってもよくない何かをつくり続ける

この結果は、政府の人もおそらく誰も望んでいる訳ではないと思います。

それは、政治家も官僚もそうです。

しかし今のままでは、望んでいないのに、この誰にとってもよくない何かをつくり続けることしかできないと思います。

 

今回でいうと、政府は7/22からGo toキャンペーンをやろうとした。

当初案のまま実行すれば、少なくとも短期的な経済効果は、今の案よりも圧倒的に効果的なものになったと思います。

しかしながら、それは様々な反対意見がある中では、日本ではできなかったことです。

 

残念ながら、なにをやっても、ほとんどの場合これと同じことが起こっています。

実際に自分が働いている時にも、こんな調整を日々やっていました。

 

これにどう対処するのか?というのはいくつかあると思いますが、その一つは

・国のリーダーに権限を渡して任せること 

 

だと思います。

 

ただ、これには、リスクがあり、日本が第二次世界大戦の反省からつくってきた今の民主主義とは逆行することにもなりそうです。

今の体制は、緊急時には弱いような気もしますが、例えば、コロナを全国的に大感染させるような自体も起こすような、大失敗もしなさそう。。。

 

このあいまいなものが日本の良さであるようにも思うところもあります。

そのせいでじわじわと、ゆでガエルのように死んでいっているとは思っていますが。

 

5.地方分権

どう対処をするのか、自分なりの考えはいろいろとありますが今回ここでは本題ではないので、簡単にだけ。

一つの選択肢は地方分権を進めることだと思っています。

 

国は議員内閣制/地方は大統領制であることもあり、地方の方が現状の制度のままでもリーダーシップを発揮しやすいように思います。

 

今回のGo toキャンペーンでも、極端な話としては、東京からの旅行者を受け入れるのか、それぞれ決めるという選択肢もあるかもしれません。

 

つまり、東京からの旅行者を積極的に受け入れて経済を回していきたいところは受ける、リスクが高いと思うところは受け入れをしない、それを各都道府県なり、市町村なりの単位で決める、そしてその結果が出る。

 

そこを各地方が、国の責任としている限り、全国一律で制度をつくろうとする限りには、今回のようなことを繰り返すだけになってしまうでしょう。

 

ただ、これは極端な話で、現在はやはり国が大きいため、もっと地方に権限をうつす、今回でいうと財源を地方に渡すなどが、良いのかと思ってはいますが。

 

6.優秀な人が集まるように信じる・感謝する

最後に、今回のGo toキャンペーンは、誰かが望んだ結果こうなっているのではなく、今の制度が生み出してしまったものだと思っています。

誰も望んでいないのに

そして、これは残念ながら今のままでは誰も変えることができないと考えています。

 

そして理想論を語り、自分が正しいと批判をするだけでも変わることは難しいように思っています。

地方分権も大きな話で、すぐにそう変わるものではないと思っています。

 

まず、自分ができることとしては、政治家や公務員のみなさんのことを信じる、そして感謝するということかなと思っています。

 

自分の元同僚でもあった公務員の方々も精神的にも肉体的にもハードな仕事を頑張ってくれていたと思います。

政治家の方々も、私もどうかと思う方もそれなりにいる一方で、すごく素敵な方もたくさんおられると思っています。

 

今回、自分も日本政策金融公庫さんからの借り入れや、持続化給付金、感染拡大防止協力金など、すごく迅速に対応してもらい、本当に感謝をしています。

 

でも、おそらくこれらの支援を、この短期間の間に真剣に考えて、実行してくれたみなさんは、批判ばかりされて、感謝をされることなく働いていたのではないかと思っています。

 

なのであらためて、お礼を言いたいと思います。

本当に助かりました。

ありがとうございます。

 

私は、ここに信頼と感謝がないと、真剣に考えて取り組んでいる人であればあるほど、どんどんと病んでしまったり、あるいはこの中にいては変えられないと考えて、政治家や公務員をやる人が減ってしまうように思っています。

 

結果、政策の質も下がっていくことになると思います。

優秀で、真剣に考えている人に続けてもらえるように、働きやすい環境をつくるためにも、まずは信じることと、感謝をすることができることなのではないかと思っています。